【村上春樹の短編集】回転木馬のデッドヒート:全話感想

2021年8月3日

こんにちは。めたろんです。

この記事では、村上春樹の長編はよく読むけれど、短編集はとっつきにくく感じるという方に向け、例として筆者が愛読している「回転木馬のデッドヒート」の感想をまとめています。

 

めたろん
村上春樹の短編集の雰囲気を知っていただくきっかけになればうれしいです。

 

それでは見てみましょう。

 

【村上春樹の短編集】回転木馬のデッドヒート:全話感想

 

「回転木馬のデッドヒート」全話感想

※筆者の印象を主に書きましたが、一部あらすじが含まれる箇所もありますのでご注意ください。

 

レーダーホーゼン

「嫌悪」というものをこれほど生々しく浮かび上がらせた作品を筆者は他に知りません。

長い日常の末に旅に出るというイレギュラーな行動をとってみた女性。

その結果訪れる思いもかけない境地。

長い距離を移動するというのは、良くも悪くもその人に大きな作用を及ぼすものなのかもしれません。

 

タクシーに乗った男

登場する画商の女性は極めて有能で、なおかつ冷酷です。

正しい眼で見て才能がないということ。どんなに努力をしても、養うべき家族がいても、画家としてのあなたはそこで終わり、ということが書かれています。

村上春樹その人の厳しさも現れているのかもしれないと思ったりします。

 

プールサイド

35歳。美しい妻、地位のある仕事、申し分ない住まい、そして若い愛人まで得て、これ以上なにを望めばいいのかわからなくなった男の話です。

青春の終わりの刺すような痛みすら、やがては背を向け去っていく。

その先になにがあるのだろう?

 

今は亡き王女のための

並外れて美しく若い女性を見たとき、人は誰しも思うのではないでしょうか。

ああ、今が花盛りだと。

けれど、その後に訪れる長い秋の季節こそ、小説のモチーフにふさわしいのかもしれません。

 

嘔吐1979

「因果応報」がとてもスタイリッシュ、かつミステリアスに描かれています。

嘔吐という生々しい単語とは裏腹に、なぜかイメージに浮かぶのは都会的な洗練された室内の情景。

何かが蓄積しつつある、というような不穏さを楽しむ作品かもしれません。

 

雨やどり

自分が不当に扱われたと感じた時、人はどんな行動によって自らの尊厳を回復しようとするのでしょう?

誰も答えは教えてくれない。確信がないながらも懸命に光のある方向へ向かおうとする。

その行為のあやうさが淡々と書かれています。

 

野球場

この作品の中で、筆者にとって一番存在感のある単語は「グロテスク」でした。

物事を必要以上に拡大してしまった時、どんな副作用がおこるのか。

感じの良い字を書く男性の恋とその陰りが描かれた作品です。

 

ハンティング・ナイフ

誰からも期待されず、それでいて裕福で何もする必要がない人たち。

そんな袋小路的世界にそっと登場する、素晴らしい切れ味のナイフ。

持ち合わせているはずの情熱は、出口のないままに消えていくしかないのだろうか?

行き場のない生命力の苦しみを感じる作品です。

 

村上春樹の作品イメージ

筆者にとって村上春樹さんの作品に出てくる主人公は永遠の30代というイメージです。

 

そしてその作品世界をひとつの絵になぞらえるならどの作品を選ぶ?と聞かれたら、

私は迷いなく「芸術家の肖像画/デヴィッド=ホックニー」をあげます。

肖像画といいながら、きれいな水をたたえたプールで気持ちよさそうに泳いでいる人とそれを見守る人の絵なんです。

この不思議さと明るさが、村上作品と重なると感じます。あなたはどうですか?

 

 

「回転木馬のデッドヒート」は20年位前に初めて読んだと思うのですが、ずっと好きな作品です。

村上春樹さんが実際に聞いた話(実話)を元に書いた作品ということです。

それでなのか、どの話も何か説明のつかないリアリティがあり、そこはかとない怖さがあります。

 


いかがでしょう。

独りよがりな感想も混ざってしまったかもしれませんが、少しでも読んでみたいなと思っていただければうれしいです(^^)/

-読書